犬たちがいつも兄弟ゲンカ
雌犬を飼ってしつけている人にとって、自宅で出産させるのはこのうえない喜びです。
かわいがっていたコが、ママになる。出産を待つまでのドキドキ感も幸せですが、生まれた赤ちゃん犬が日に日に成長するのを見ると、また嬉しくなります。
母犬は目の開かない子どもたちの面倒をあれこれよくみますが、生後三〜四週間もすると、目配りはしていても世話をやく度合いがぐんと減ります。そんなころ子犬同士のケンカが始まるのです。
兄弟同士で噛み合う、上になったり下になったりして取っ組み合い、あるいは追いかけっこをするなど。ときには「ウー」と小さな捻り声を発したり、噛まれたほうが「キャン!」と悲鳴をあげたりします。
そんなときでも母犬は知らんぷり。ちょっと前まで、オッパイを飲ませたり、お尻をなめてあげていた姿と比べると、子育てをやめてしまったのかと心配になってしまいます。
でもここで飼い主が、悲鳴をあげた子犬を抱え上げて救ったりするのは、その子犬のためになりません。
兄弟犬は、まるでケンカのように見えるじゃれ合いのなかから、犬同士のルールを身につけようとしているところなのです。
いわば、「ケンカごっこ」という遊びのなかで、集団生活でのマナーを覚えます。それは、まず体力のあるコが勝負に勝ち、群れのなかでの順位が決まるということ。集団生活をするどきに序列はとても大切です。勝ったり負けたりしながら相手と自分の力を測っていくのです。
ほかにも、噛まれたら痛いということ、どのくらいまでなら噛んでも相手を怒らせないのかなどを覚えます。
追いかけっこも、犬本来の狩猟能力を高めるという点で子犬には欠かせないものです。
こうして兄弟たちと噛んだり相撲をとったり鬼ごっこをしながら成長した子犬は、ペットとして人間と暮らしていくときの集団生活のルールが身についています。
飼い主の家族とはもちろん仲良く過ごせますし、しつけもラクでしょう。
また、散歩に出たときよその犬と出会っても、やたら吠えたり捻ったりすることがありません。
いろいろな犬と触れ合っていけば、ときには、やむをえずケンカをしなければならない状況に陥るかもしれません。そんなときでも、子犬時代にたくさんケンカごっこを経験しているので安心です。もちろん相手が強いとわかれば腹を見せて降参する方法も覚えているはずです。
犬のことに詳しくない人が、子犬同士のケンカを見たらき,っとハラハラするでしょう。
でも、こんなにたくさんのことを兄弟ゲンカから学べるのだと知っていれば安心して見ていられます。


