犬との触れ合いの必要性
犬のしつけとは、誰が行っても成功するようななまやさしいものではありません。
しかし、複雑な社会生活を営んでいる犬は、数多い動物の中で、人間と複雑な社会的きずなを結ぶことができる数少ない存在の一つです。このきずなは生来の犬の行動様式としつけの見事な調和により作られるものであり、犬との良好な関係を目指す人に対してのみ結ばれるものです。
調和のとれた愛情がしつけを成功させる第一歩なのですが、多数の飼い主はこの基本となる心理的要素を無視しています(ドドゥスンによれば多数の人間の親も同様とのこと)。過度に甘やかしたしつけは、きずなを弱め、いろいろな問題行動を引き起こす原因となります。逆に、無条件の服従を要求する厳格で行き過ぎたしつけも、強固なきずなを作ることができません。
体罰はこの「触れ合いの必要性」という基本原則を損なうものです。犬に体罰を加えるたびに犬はあなたを恐れ、さらに嫌うようにもなるでしょう。1歳の犬を殴ることは、20歳になる人間を引っぱたく行為に匹敵するのです。その結果、犬のより激しい拒絶反応を引き起こすことにしかなりません(これはまったく当たり前のことであろう)。
後述する「服従の姿勢」をさせることは、このきずなを作り上げるのに理想的な解決方法です。この姿勢を犬にやさしくとらせれば、あなたが群れのリーダーであると犬にわからせることができます。そして、子犬とは、強くやさしい、見識のあるリーダーを求めているものなのです。
子犬たちは知性の働きによってではなく、肉体的矯正、しかも、できれば苦痛を伴わない方法で学んでいきます。彼らは群れのリーダーに完全な信頼をおき、自分の個性を失わずにリーダーに従います。
また、犬が何かを学ぶには、飼い主との間の愛情と同時に精神的条件が整わなければいけません。犬が仲間と夢中になって遊んでいる時に、「伏せ」を教えてもうまくいかないものです。
たとえば、猫がメトロノームの音に反応することは、脳の一部に入れられた電極により証明されています。しかし、ネズミが現れると、同じ猫はもうメトロノームの音にまったく反応を示さなくなります。猫は他の刺激に熱中し、耳が聞こえなくなるのです。犬もまったく同じで、何かの社会的な活動(遊び、喧嘩など)に熱中すると、あなたが懸命に呼んでも、まったく耳に入らなくなってしまいます。
ですから何かを教える時には、相手の動物に、それを受け入れる最低の条件が整っていなければいけません。動物があまりにもくたびれていたり、病気であってはいけないのです。寄生ぼうこう虫がいたり、膀胱炎の犬に、糞便のしつけを教えようとしても失敗するに決まっています。犬があなたの教えることを実行するためには、まず子犬の精神がどのように発育するのかを学ばなければなりません。
教わることを受け入れる条件が犬の側に整い、そして実行する能力があることが、しつけの第一歩なのです。