犬 犬のしつけ 子犬のしつけ方

犬への体罰

への罰については昔から様々な議論のあるところです。ここで、この問題について考えようと思
いますが、議論が尽きることはないでしょう。ひとつ確かな事実は、子犬が3週目になると母犬がこのやり方を用いることです。この時期になると、子犬たちからすっと離れる、または、首の皮をくわえたりして、子犬たちのいつ果てるともわからない大騒ぎを終わらせます。
しかし、広く行われているこの体罰はあまり効果がなく、好ましくない行動を改善するどころか、場合によっては、かえって悪化させる例を多く見ています。体罰という方法は、してはいけないことを教えますが、好ましい行動をとるようには仕向けません。
まず、よくないことを罰する、という否定的強化は、関心を誘うために疑似マゾヒストとなる傾向の犬にとって、褒美ととられる場合があります。
次に、犬は罰を与える人を避けるようになりますし、根深い恨みの感情を植えつけられ、復讐の念を持ちます。体罰とは不快な刺激であり、自分を殴った人は「不快な刺激を与える奴」ということになり、快くない反応を引き起こします。体罰は、学習を妨げたり、飼い主との友好的で愛情のこもった関係を損なう神経的な反応の原因となるのです。

いずれにせよ体罰とは、社会性を身につけさせる、という法則に反するとともに、飼い主と犬との関係に修復できないような亀裂を生じさせることがあります。体罰による苦痛、あるいは恐ろしい刺激は、犬の逃亡、防御噛咬を引き起こしますし、もしそれが8〜10週でなされると、一生の間、決して消し去ることのできない「刷り込み」となってしまいます。
動物が幼い時のある特定時期の経験は、その精神に深く刻み込まれ、一生影響が残るとするもの。日本では通常「刷り込み」と訳す。コンラッド・ローレンツらにより提唱され、動物のしつけの際に忘れてはならない概念)
子犬はだいたい生後7週目に自宅につれてこられますが、7〜10週目は、恐怖の観念が非常に刷り込まれやすい精神的発展の時期なのです。ところが、この時期にトイレのしつけをしなければいけません。もし、この時期に犬を殴ったり小便の中に鼻を擦りつけたりすれば、社会生活における喜びの対象であるべき飼い主は嫌悪すべき存在となってしまいます。

そして、この感情は犬の精神に深い根を下ろします。そうなると、飼い主は一方では喜び、他方では嫌悪という矛盾した反応を引き起こす原因となってしまうのです。この二つの感情に於ける葛藤が神経症を引き起こす基となる例は、しばしば見られるものです。


恐怖心や臆病な性質を過度に持っている犬に体罰を加えると、あとずさりや、逃亡しようという感情を悪い方向に強化することとなり、何回も繰り返されたあげく、神経に深い傷痕を残し、癒すことが困難となります。

そうはいっても、後述するように、他の方法がうまくいかない場合に、正しく利用されるという条件で、体罰が有効な場合もあります。緊急、そしてきわめて重要な問題が発生した時にこそ、体罰は値打ちがあるのです。もし、が道路を横断して車にはねられる危険がある時、大声で罰したり、体罰を加えることによって事故を防げるかもしれません。
もし、犬が食べ物をせがんだり、靴を噛む、置物を引っくり返すなどしてあなたが我を忘れるほど憤慨した時、一発かませてやれば平和を取り戻せるかもしれません。しかし、「罰せられる者よりも悩むような優しさを持っている人のみが、体罰を与える権利がある」というローレンツの一言をつけ加えましょう。


さて、お宅の犬は仲間と遊んでおり、あなたが呼んでも帰ってきません。悪いことには次第に遠くに行ってしまい、いくら叫んでも耳に入りません。それでもあなたは待ちますし、犬があなたの声を聞いたのは確かで、聞こえないふりをしているのは確実です。あなたは次第に機嫌が悪くなり、「あの馬鹿にこういう場合、どうやって"来い"を教えるのだろう」と考えます。しかし、ついに帰ってきました(必ずいつかは帰ってくる)。あなたは犬を捕まえピシャピシャ殴ります。このような時の体罰は馬鹿げていますし、無意味なのです。犬はさっき呼ばれたことなど、とうの昔に忘れています。そして今、あなたが望んでいたように帰ってきた時、犬を罰しているのです。つまり、帰ってくるのを嫌がるように教えているわけです。
さらに問題なのは、あなた自身の行動です。あなたは長い間待たされたので復讐しているのです。犬に与える体罰はあなたの心の安全弁であり、しつけの成果を台無しにして苛立ちと怒りを発散しています。冷静であってください!今、困難に耐えれば、今後10年にわたり喜びがもたらされることを忘れてはいけません。
では、いつ、どうやって罰を与えるのでしょうかり・10秒たつと、犬は今までやっていたことを忘れてしまいます。守らなければいけない原則は、「罰は罰すべき行為に続いて与えられ、直接それに結びつけられていなければならない」。ですから、犬が靴を鶴っていたら、その最中に罰されなければいけませんし、その靴を使って罰が下されることが望ましいのです。


犬がごみ箱を引っくり返していたら、その最中に罰を与えなければいけません。犬があなたの足元に満足げにうずくまりに戻ってきた時に罰すれば、あなたに会う喜びと嫌な罰が結びついてしまいます。ですから、そのような時に罰してはいけません。もし、犬がごみをあさり、悪い物を食べ、すぐに吐いたなら、犬は十分な教訓を得て、しばらくはこのようなことをやらないと確信してもいいでしょう。なぜなら、行為と罰がはっきり結びつけられているからです。嫌な罰が、それを与える人と結びつけられないように用心することも有効です。パチンコや水鉄砲を用い、遠くから罰すれば、あなたが犯人とは思われません。


もっと理想的なやり方は、そこにあなたがいないことです。もし、犬が扉に飛びついたり引っかいたりするなら、ネズミ捕りを置いてごらんなさい。犬はその場所、もしくは自分がした、あるいはしようとする行為と苦痛、恐怖を結びつけます。ガラス玉の入った金属缶は恐ろしい音を立てるので、子犬や感じやすい犬には有効です。鎖とか、大きな鍵の束などを投げるのも効果があります。

離れた箇所で不快な刺激を与える方法として、電気首輪があります。注意深く使用すれば非常に役に立つ機械です。しかし、乱用しないよう注意してください。この機械は、無駄吠えをして困ったり、独立心の旺盛な犬に「来い」を教える時に最も役に立つでしょう。この首輪は、離れた所にいる飼い主のテレコマンド機械の操作により、首輪から電気的刺激がに与えられるものです。特に毛が湿っている時、電極による火傷が起きないよう、注意してください。
(訳注この首輪の使用には、キャンベルをはじめ、多くの人が反対している。ベルギーのある訓練士は犬が精神異常になるからやめたほうがよい、といっていた。事実、訳者が神経質な犬に用いたところ、ただちにその兆候が表れたので使用を中止した。したがって、ほかの手段を試み、どうにもよい解決方法がない時以外は使用すべきではない)体罰は好ましくない行動をやめさせる以外に、飼い主の支配力を強化するために有効です。
「犬に於ける体罰の効果は、犬が受ける苦痛の度合いに関係するものではなく、罰を与える人の力強さの印象に比例するものである」(ローレンツ)。この規定はきわめて重要です。
犬は、上下関係を維持する要因には抵抗なく従います。しかし、殴ったり蹴ったりするやり方は、罰として適当ではありません。また、犬のリーダーが罰するやり方を真似るなら、首に食いつき、相手を持ち上げ振り回さなければいけません。ですから、一般には首の皮をつかみ、振ってやれば十分です。なにもあなた自身の顎の関節を痛めることもないでしょう!この方法を成犬に初めて使用すると、棒で殴るよりも精神的に恐慌をきたすので一番効果的です。


大声を出すと服従するような犬は、殴ってはいけません。体罰とか、不快な刺激を与える度合いは犬の性格により加減すべきです。ある犬はめちゃくちゃにやっつけないと効果がないし、他の犬には声を荒くするだけで十分なのです。あなたの犬の個性と感受性を尊重しましょう。
犬が他の動物を攻撃する場合、その動物の死骸で引っぱたくことも可能です。この場合、死んだ動物についての恐怖のほうが痛さより効果があるでしょう(ローレンツ)。
いくつかの障害により、求める結果がまったく得られない場合があります。悪い行動には罰、よい行いには褒美を結びつけさせようとしても一貫性を欠いてしまうと(ある日は罰し、ある日は報いる)、繊細な神経系統を持った犬に感情的なストレスを生じさせ、神経症にしたり、異常行動をとらせることがあるのです。このようなストレスは主人の不在中、物を壊すなどの行為で発散されることが普通です。


ついで難しいことは、体罰と自分の悪事をうまく結びつけてくれるか、という問題です。罪の意識があると飼い主が考える犬についてはすでにお話ししましたし、長い間呼んでも来なかった犬が、帰ってきた途端に罰せられる例も引きました。


第三の問題点は犬の性格についての認識不足からきます。抑圧を受け入れる臆病な犬に体罰は有効ですが、攻撃的な犬に対しては逆に大きな問題を引き起こします。後者の犬は通常、体罰と非難されている行為とを結びつけますが、過剰な攻撃的反応と復讐の念を持つようになってしまいます。こういった犬はほかの犬を脅やかすとの理由で罰せられた結果、本当に喧嘩を始めます。また、罰せられた結果、今まで平和に共存していたほかの動物に復讐する、物を壊す、不快な刺激と手を結びつけて飼い主の手を噛む、などの行動をとります。


同様の考え方や理由から、体罰は犬種によっても手心を加えなければいけません。ビーグルに対しては比較的軽度の罰が十分な効果をあげますが、テリア類に体罰を加えると、抵抗と攻撃性を示したり、敵意を見せることすらあります。

すべての場合において、やりすぎは禁物です。あまり脅かしたり体罰を与えたりすると、「体罰症候群」(キャンベル)になってしまいます。犬は体罰を与える人に対し完全な服従状態となり、それをすべての人に一般化する場合もあります。この兆候を過度の臆病と混同してはいけません。この犬は単に棒で殴られるのを避けるため卑屈な姿勢をとることを学んでいるのです。このは自分に自信を失っており、それを直すには「お座り」「伏せ」「来い」などのやさしい命令を与えてよく撫でてやり、心をこめて勇気づけてやらなければいけません。飼い主は膝をついて、犬の横腹か胸を撫でるのです。立ったままで正面から近づくと、犬は脅かされていると感じます。犬を安心させておやりなさい。体罰を一切やめて勇気づけ、肯定的強化の方法を用いれば、すぐに自信を取り戻すでしょう。

不快な刺激を与える別の方法として、たとえば机の脚を解る犬を何時間もそこに縛りつける方法があります。自由を奪われたことと好ましくない行為をした場所を結びつけるので、そういった行動をとらなくなる可能性があります。また、飼い主が犬をわざと徹底的に無視する方法もあります。


が「来い」に従わなかったなら、を見捨てるふりをしなさい。どこかに隠れ、犬が戻るのを待つのです。あなたが見えないので犬が慌てふためいたら、やさしく呼んでやり、戻ってきたらうんと褒めてやりなさい。もし、遠くから犬がこちらをチラチラ見て帰ってこなければ、逆の方向に歩き、犬を見捨てるふりをするのです。犬はひとりになるのを恐れ、ついてきます。
これらの例は、「社会生活に対する興味」の法則を利用したものです。
次のやり方は、実際のところ体罰ではありません。これは「放置」(ドドゥスン)というやり方です。数分の間、犬をどこかに閉じ込めるか、あなたが消えていなくなります。これらはまったく冷静に、つまり淡々となされなければいけません。
もし犬が大騒ぎをしても、絶対扉を開けないで、犬が静まるまで待ちなさい。好ましくない行動は絶対に報いられてはいけません。
もし犬が遊びたがってスリッパを謁ったり新聞の束を引っくり返したりして、気の進まぬあなたを何とか鬼ごっこに引きずり込もうとしたら、15分ほど犬から離れなさい。もし犬を台所や車庫に閉じ込めようとすると、まずつかまえなければならず、犬の思うつぼにはまって鬼ごっことなります。ですから、あなたがいなくなってしまうのです。このやり方に於いては、あなたの態度がまったく犬に無関心に見えるので、犬はこのような態度をすぐとらなくなります。
あなたの犬が小便をするので絨毯がだめになりました。さて、一番よい方法は犬が外で排泄するのを褒めてやることですが、絨毯の上でやっているところを見つけない限り、何もしてはいけません。もし現場をとらえたなら、壊すものがない部屋に押し込めます。こうすれば、犬は不愉快な孤独と自分の犯した行為を結びつけますし、よい場所でした時に肯定的強化をしてやれば、トイレに関する問題のない犬となるでしょう。


最後の例は「放置」と「消去」を複合したやり方です。後者は、今まで報いられていた行動をこれからは奨励しない、ということに尽きます。静かにして無関心であれば、その行為は強化されないので自然に消え失せます。犬が扉をひっかいたり車を追ったり、郵便配達人に吠えたりする癖があると、その行為はある時は報いられ、別の時はそうではありません。このような癖を矯正するのは時間がかかり、困難でもあるでしょう。こういった時に、「放置」と体罰によって新たな条件づけが可能になります。
「消去」の方法は、関心を持たれるのを好み、それを行動に表す犬には驚くべき効果をあげます。この種の犬は、小便をする、物を引っかく、具合が悪くないのに咳をして見せる、自分の体を傷つける、どこも痛くなくても足を引きずる、などをして見せます。子犬が手に入るものすべてを玩具にする場合、このやり方を使ってください。

しかし、同時にその基本的な生理的欲求を満たすのを忘れてはいけません。人間の大人が静けさと秩序を求めるのに反し、子犬は、走る、飛びはねる、やかましくするなどの欲求を持っているのです。同時に子犬には均衡のとれた筋肉を発育させ、敏捷性を身につけさせ、衝動的行為を制御する
ことを覚えさせなければいけません。
環境の整備も必要です。家庭環境はめちゃくちゃをしでかすうるさい子犬のためではなく、落ち着いた思慮深い人間のために作られています。もし、ごみ箱に犬が近寄れるなら、遠からとがず問題が起きるでしょう。もし、低いテーブルの上に糸や針が置いてあれば、子犬が尖って胃壁に穴をあける異物をのみ込んで、消化器官の問題で悩まされることになりかねません。不始末をしでかすことが少なければ、すべてに於いてあなたの生活は平穏ですし、犬もひどい目に遭わずにすむ、というわけです。
次に忘れてはならないことは、犬は飼い主の真似をしたがるという事実です。ですから、あなたが植えたきれいな花を犬が花壇からすっかり引っこ抜いても、驚かないでください。

統計によると、行動に問題のない犬の飼い主のうち25パーセントだけが体罰を使用しています。

これに反し、種々の問題(攻撃性、物の破壊、お漏らし、無駄吠えなど)を抱えた犬の59パーセントが体罰を与えられており、キャンベルは「体罰というものが、問題ある行動について治療効果があるより、むしろその原因となっていることは疑いのないことと思われる」と述べています。