犬 犬のしつけ 子犬のしつけ方

孤独症候群と幼児体験

 

犬のしつけにおいての孤独症候群


生後14週目以前に人間と接触を持たなかったは、荒々しく、近づきにくい存在になり、とても人間と共同生活を営むようにはなれないことが実験によって示されています。こういったは野生の狼と同じく、人を見ると恐怖にかられ、逃亡するか、恐れが原因で攻撃をしかけてくるのです。
生後4週目以前の場合、人間との接触の効果は少なく、ついで5〜7週目に人に対する社交性は頂点に達し、以降14週目まで下降線をたどることを、実験者たちが確認しています。この時期が過ぎると、どんな試みもよい結果をもたらしません。しかし、この4〜14週の間に、1日にー〜2分の時間を子犬たちに割いてやれば、正常に人間になつくものです。


人間、あるいはほかの動物との接触がまったくなかったは、全般に活動が非常に鈍く、接触を持とうという意欲が著しく欠けています。これらの子犬たちは精神的に未発達で、不自然な行動をとり、しかもそれに共通点があるのです。震え、自分の尻尾を追いかける、捻り、人や動物を避け、臆病で恐怖心による攻撃性を見せ、ものの習得がうまくいかず、新しい刺激に対する反応が鈍いのです。この共通した行動形態と接触の欠如の問題は、人間の子供の自閉症と似通っています。
この型にはまった行動(回り続ける、片足を上げて立つなど)は愛情と刺激を十分に受けることのできない動物(動物園にいる多数の動物、入院中の動物など)に見られ、彼らは不安を除くため、自分自身に刺激を求めているのです。悪い意味で複雑な環境で育てた場合、これらの行動はより頻繁に起き、神経系統に深く根を下ろす結果、一種の習慣になってしまいます。


このように隔離状態の子犬は苦痛に対して非常に鈍感です。他の犬と一緒にすると攻撃に移り、その結果自分がひどい傷を負わされてもまた同じことを繰り返します。これは一種の神経障害になりかかっているのです。
7〜10週の問に一時的に子犬を隔離状態におくと、元気がなくなって鳴いたりして無気力状態に陥り、栄養失調になるほどの食欲不振となります(この栄養失調は食物の欠乏というより愛情の欠如によって食欲が衰えて起きる)。この危機的な時期は、人間の子供の6〜10か月に相当します(フォックス)。
6か月から3歳までの問、両親から離れて過ごした子供というのは情緒が不安定になったり、愛に飢えたりすることがあります。犬舎、あるいは検疫所で親から隔離された子犬は成犬になってから似たような傾向を示し、人や無生物に対しても攻撃性を見せることがあります(凶暴性発作)。このような犬は、一方が威嚇し、他方は服従の姿勢をとるといった通常行われるやり方で争いを避けることをせず、見境なく攻撃します。
幼年時代の不幸な体験の中で、「放置」こそが最も重大で最大の問題を引き起こすのです。

犬のしつけにおいて豊富な幼時体験
精神的な問題を起こしやすい、あるいは種々の精神病にかかる傾向のたちがいる半面、順応性が高く、いろいろな環境に容易に慣れる犬もいます。これは神経系の様々なタイプによる現象と見られ、あるは精神的に弱く、他のは強く、均衡がとれているのです。さらに、肉体的、または遺伝的要因、ホルモンの具合、そして幼時の体験が作用してきます。ある犬たちは従来の性質、または生後の体験により、異常な行動を起こしやすい場合があります。この異常行動とは、脆弱で均衡のとれていない神経系が環境によく適応していない、という表現にほかなりません。


生後3〜14週の間、聴覚、視覚、触覚に適当な刺激を受けた子犬は、それらが欠けた仲間と比べ、大きな差をつけます。その違いは、行動面、肉体面に見られ、前庭器官の神経単位はより大きく、ホルモンの分泌はより十分で、筋肉の調和がまさり、知的水準は高く、新環境に順応しやすい、脳波の活動が早く成熟する、などの面に表れます。
社会性を身につける時期を通じて様々な刺激を段階的に与えると、犬は肉体的にも精神的にもよ優れたものとなりますが、時によっては攻撃的になることもあります。
この時期の子犬を育てているブリーダーは、健康で均衡のとれた、そして強い神経系統を持った犬を将来の飼い主に引き渡すために、日頃から社会性を身につけさせる方法を用いてやらなければいけません。
子犬たちを毎日(少なくとも2日に1回)いじり、体重を量り、ゆっくり前後左右に体を傾けてやり(平衡感覚を発達させ、前庭器官神経を強化する)、引っくり返し、愛撫し、擦る(皮膚を軽くつまんでやる)などなど。
少しずつ音量と音質の異なる刺激を与えます。ラジオ、ガシャガシャいう金属音、手をパンと叩く音、ベル、様々な声、掃除...機や雷の音、鉄砲の音など。
犬の巣に鏡を置いて、視覚の刺激を強めます。もし、巣をランプで温めているなら、それも刺激の材料としてください。
 
駆動力をつけるため、巣の中に粗い織物の絨毯を敷いて、幼犬が歩きやすいようにします。
絨毯を巣に敷くと、それが「刷り込み」の役割を果たし、新たな飼い主のところで絨毯に粗相をしなくなります。
(犬は本来巣を汚さない性質があるので、幼犬の時に絨毯を巣に敷けば、絨毯11巣の刷り込みが行われ、絨毯の上で排泄しなくなるとの考え方)ついで巣の中に、新聞紙の束やくくった本など徐々に越えにくい障害物を置いて、成長に応じたより困難な課題に挑戦させます。子犬たちが自由に扱え、危険ではなく、のみ込む恐れのない、抱いたり押したりできる玩具も与えましょう(ゴムまり、空き箱など)。
家の中の刺激に徐々に慣らすため、いろいろな部屋に連れていってやり、種々の音、におい、光、感触を経験させます。よく注意してやりながら、階段も歩かせてみましょう。
天気がよければ庭に出してやり、まず草に、ついで街の音(もしテープで録った街の音をすでに聴かせていれば、この段階は非常に容易であろう)、交通、人込み、ほかの動物、市場、駅などに慣れさせます。
ついで停止している車の中に入れて、食事を与えます。犬が車に十分慣れてから最初は短い距離を動かし、徐々に長くします。犬がこの経験を喜んでするように仕向けてください。
可能な限りやさしいやり方で、ブラッシングしたり鼻づらをいじったり(これを受容するのは服従の表れ)、爪を切ったり、耳を掃除してやりましょう。
やさしく、しかも静かな、様々な年齢層の人々に訪問を頼み、あなたが見守る中で子犬と遊んでもらいます。種類、色、大きさの違う他の動物にも会わせるように仕向けましょう。

もし将来、子犬たちが街でいろいろなつきあいをすることが予想されるなら、子犬をほかの犬、猫、鳥に慣らせます。あなたの犬が隣人の猫と仲よくすれば、皆が好意を持つに違いありません。
何回も定期的に子犬に社会性を身につける訓練をしましょう。持ち上げたり、引っくり返して服従の姿勢をとらせたり......。犬がきちんと静かにこれらの姿勢を受け入れるまで行います。

5週目頃から、首輪に慣れさせます。最初は数分、そして段々と長時間、完全になじむまで。
よく見張ってください!最初は必ずひっかきます。しかし、そのうち必ず慣れます。早くそうするため、遊びや食事で犬の注意をそらせます。犬が首輪を受け入れるようになったら細い紐をつけてやり、しばらくしたら引き綱に替え、最初は犬に引きずらせておきます。それからあなたが綱の端を持ち、犬が引っぱるままについていくのです。最後に、犬があなたについてくるように仕向け、おいしい食物、愛情のこもった愛撫などで褒美を与えます。最初は家の中、ついで外、しかも様々な場所に犬をつれていってやってください。
8週目頃の子犬は恐怖に非常に鋭敏ですから、6〜10週の間、船、飛行機による輸送、孤独にすることなどは避けましょう。もし、やむを得ない事情で輸送するなら、相当前から橿に慣らしてください。
大きな橿に慣らすことに別の利点もあります。将来、新しい飼い主のところで留守番をさせる場合、犬の巣となっている橿に入れておけば、いろいろな問題を防ぐこともできるのです。
このようにして、均衡のとれた社会性を身につけ、各種の感覚が段階的に刺激に慣らされ、より高度の困難に打ち勝つように仕向けられ、自分の生活およびほかの存在との関係を受け入れ、楽しむようにしつけられた子犬は、おかしな行動をとらずに新しい環境に順応し、すべての人の生活を楽しくできるのです。