犬の社会性
犬のしつけにおいて食物に関する行動
「腹が減れば食うだろう」。この言葉はしばしば聞きますし、我々もよく口にしますが、いくつかの補足説明が必要と思われます。
実験によれば、離乳時に続く数か月、ある特殊な食物のみを与えると、犬は一生それに執着し、ほかの食物を与えても受けつけず、餓死する可能性すらあります。反対に、いろいろな食物を与えられた子犬は、将来なんでも食べます。これらの事実を見れば、子犬の時にどのような食事を与えるべきか自然にご理解いただけるでしょう。
子犬の肥満が、妊娠中の母犬の栄養欠如による場合がある、ということをすでに説明しましたが、遺伝が原因であることもありますし、まだ成熟していない幼犬時代に、過剰なほどのごちそうを与えると肥満になることもあります。この栄養過多は脂肪細胞の数を増加させ、太った成犬を作り出すのです。このような犬を痩せさせるためには、普通の肥満犬に対する療法と同じ手段を用いますが、その際に苛立ち、気落ち、不活発などの現象が見られ、さらに飢えのため極端に痩せたり、脂肪細胞を支配している神経系統とともに中枢部分の細胞が減少したり、筋肉が衰えたりもします。
犬のしつけにおいて注意を引く行動
社会性を身につけさせないと、いろいろな問題が生じます。社会性を学習する数週間の時期
に、もしある子犬が一人の人間だけと暮らして外界から遮断されると、この犬はその人にのみ依存し、人であれ動物であれ、ほかの生き物と肯定的な関係を持つことができなくなってしまいます。臆病ですぐ逃走し、追い詰められると噛むようになるのです。また、環境が変わると過剰反応を示し、吐いたり、際限もなく食べたりします。主人から離されると精神障害を起こし、ひどく痩せたり、場合によっては死んだりすることもあります。これ以外にも、精神異常が原因で、下痢、呼吸困難、心臓発作、皮膚病などが起きたりします。また、触感が過度に鋭敏な場合もしばしば観察されるのです。
もし、犬をほったらかしにした上、子犬を勝手気ままにさせてしまうと(人間の子供の場合も同じ)、いつも人の注意を引く行為を見せ、鳴いたり、はねたり、常に飼い主について歩いたり、ひとりにされると吠え続け、物を壊し、服従または憤慨を示す失禁をしたりします。これは人間に於ける小児症疾患と同様です。この障害子犬の症状に、いろいろな注意を引く行動が加わります。わざと片足を引きずったり、ヒステリーによる麻痺、常時なめることによる皮膚炎など。さらに、マゾヒスト的に体罰を受けてでも関心を求めるため、わざと物を壊す場合もあります。
過度に甘やかすと、家庭という群れの中で犬をリーダーにしてしまいます。そうなると犬は群れを守るため極端に攻撃的になりますし、主人を外に放り出さないまでも(最初寝床から、ついで家から!)、家族に対し性行為を試みようとさえします。
犬のしつけにおいて性的行勤
十分に社会性を身につけていない犬は、性的行動に欠陥を生じ、親しくなった人間やほかの動物に性行為を挑む好ましくない結果を生みます。「刷り込み」の状態で、人あるいは猫に慣れると(ローレンツの唱えるガチョウと同じ)、それらを同属種だと自分の神経系統に刻み込みますから、成長するにつれて、人や犬を性の対象とするわけです。母親にだけなついた子犬は、最後には母犬と性関係を持とうとし、ほかの雌犬に興味を示さない場合があります。一種のエディプスコンプレックスともいえるでしょう。