犬に来い座れをしつける
どうすれば犬が命令に従うか、という本題の前に、犬の所有本能について一言。
犬によってこの本能の強弱はありますが、狼はそれを持っており、この生来の傾向を尊重するのは結構なことです。しかし、あなたの食事の肉を盗む犬を放置してはいけないので、何らかの対策を立てるべきです。肉はあなたのもので犬のものではなく、したがって群れの支配者の地位を保持しなくてはいけません。
犬に来いをしつける
この動作は教えるのに最も容易であると同時に、成功するのはまれです。容易?そうです、
なぜなら生来のものだから。犬は社会的な動物ですから仲間を求めるのです。滅多に成功しな
い?それは犬がすぐ帰ってこずに、しばらくして帰る、すなわち飼い主の望むことをした時に罰せられるからです。
群れから離れた子犬は鳴き、吠えます。この「社会性を求める」法則を利用して「来い」を教えてください。犬が生後8週目になったら開始します。犬の名を呼び、ついで「来い」、つまり「○○来い」となります。一度この方法を決めたら、一生同じ呼び方とします。命令は不変で首尾一貫していなければいけません。
食事の前に、はっきりした声(眩いたり、小声ではいけない)で命令します。食事があなたの愛撫に加えた褒美となります。犬が数度命令に従うようになったら、食事時以外にも呼んでやり、餌と愛撫で報いてやるのです。
犬が聞いている、あるいはあなたを見ていることが確実な場合にだけ呼んでください。犬という動物は、他の活動に夢中になっていると、耳が聞こえなくなってしまうのです。もし聞こえて、あなたが見えるにもかかわらず命令に従わない場合は、楽しげな口調で呼び続けながら
反対の方角に歩いてください。遊びに対する勧誘(それに対する条件づけに対して)にこたえない犬はきわめてまれです。かくれんぼでもしてみてください。犬はあなたを探すに違いありません。そばに来たら褒めるのを忘れてはいけません。また、辛抱強く行いましょう。何秒後か何秒間後かはわかりませんが、犬は必ず帰ってくるものです。そうしたら常に褒めてやりましょう。
ところが、これが「来い」の難しさです。あなたはイライラしながら犬の帰るのを待つ。ついに、あなたに会うのを楽しみに帰ってくる犬に復讐することになります。そうなればあなたを避けるように教えるようなものです。
「社会生活についての興味」の法則に従わなければ、しつけは到底うまくいきません。
これ以外に、より人工的で面倒な、段階を追って教える方法もあります。6メートルのナイロンの綱を用意し、一端を犬に結び、他方を握ります。これは弱い刺激を犬に与え、来る気を起こさせるためです。強く綱を引くと、犬はこの種のしつけを嫌がるようになるので、楽しく、熱意を込めた声と何かの褒美で誘いながら、軽く綱を引くのです。
もし犬が拒否したら(なんて頑固な奴!)、「ジュピターの雷」を使ってください。天から降ってきた「恐るべきこと」により、犬は群れのリーダーの保護を求めに来ます。ヴォルマーは大きな鍵束をあなたから離れている犬の前に投げるか、必要とあれば尻にぶつけることを勧めています。痛さより音が犬を脅かすので、その時、熱心に呼んでやれば、何にも増して効果があります。このしつけは一人で行っても、補助者を用いてもいいでしょう。
これ以外にも、パチンコ、コマンドで作動する電気首輪なども役に立ちます。
いかなる状況に於いても、またどんなに気が散っていても、子犬が命令にこたえるように訓練しなければいけません。当然のことながら、最初は静かで気の散らない場所から始め、最後は人込みなどの中で訓練しますが、犬の実行可能な環境の中で行うことが大切です。ですから、まず家の中で食事の時、ついで食事以外の時間、そして戸外の静かな所で、それからほかの人々がいる所、さらに犬たちと一緒の時、森で遊んでいる最中など......。
2メートルずつ距離を延ばしていって、6メートルから12メートル。次に綱から手を離し、最後は綱を首から外して行います。
もし退歩が見られたら、前段階に戻って繰り返します。時間をかけ、段階的に訓練してください。
犬を呼ぶ時、手招きの合図を入れてみましょう。しゃがみ、あるいは前に上体を倒し、下げた掌で腿を叩き、内股の方向に撫でるような動作をします。この動作に呼び笛を2回吹き加えてみます。このような連続的条件づけにより、近くにいる時は声、遠くでは呼び笛、視覚に於いては腕の動きの三様の方法で、犬をあなたの管理下に置くことができるのです。
本件に関する議論についてもう一言。犬を呼ぶのはただ1回にすべきか、それとも繰り返すべきかり・繰り返すべきという考えは「犬は最初の命令を聞いていなかったのだから、命令が確実に実施されるため」というものです。1回きり、の考え方によれば、「犬は最初の命令をちゃんと聞いており、もし2回繰り返せば、聞こえないふりをし、すぐ帰らないことを学ばせてしまう」となります。
解決策はこの2種の極論の中間にあるのでしょう。2〜3回繰り返して犬が命令を聞いたことを確認できたら、犬から遠ざかり、少しでも犬が戻りそうな気配を示したら、犬を褒めてやるのです。15分も呼び続け、声を枯らすのはやめるべきです。2〜3回、はっきりした声か呼び笛で呼べば十分でしょう。
①食事の前にはっきりした声で呼ぶ。
②犬が命令を聞くようになったら今度は食事時以外でも家の中で呼び、きちんと来たら餌をやる。
③それがうまくいくようになったら戸外で行う。
④もし犬がいうてとを聞かなければ6メートルの綱をつけ、犬を呼びながら軽く綱を引き、犬が来る気配を見せたら褒めてやる。
⑤もし犬が飼い主から離れたら、犬の前(必要なら尻)に痛くするというより音で驚かすものを投げ、ついで犬を呼んでやる。
⑥距離を一度に2メートル延ばし、6〜12メートルに延長する。
⑦綱を首輪につけたままで手を放す。
⑧綱を首輪から外す。
⑨声で呼ぶのと同時に手を下げ、掌で腿を叩き犬を誘う。
⑩声と身振りで呼ぶと同時に、呼び笛を2回吹く。
犬に座れをしつける
この訓練は特に難しいものではありません。
犬が注意を集中する時に最も頻繁にとる姿勢だからです。子犬が生後8週目前後になった時、消極的なやり方、つまり犬が何かの拍子で座った時に「座れ」と繰り返して聞かせ、教えることが可能です。こうすれば、姿勢と命令を犬に結びつけさせられるのです。
英語の「Sit」のほうが発音が短くていいかもしれませんが、いずれにしても一度使用した言葉を変えてはいけません。
積極的な方法で教えるなら、「座れ」といいながら、片手に玩具、あるいはもっといいものなら餌を持ち、頭上にかざしてやります。
もし犬がうまくいいつけに従わないのなら、犬を壁の前に連れていって、同じことをやります。犬は後退できないため、褒美をもらうために座らざるを得なくなるでしょう。褒めて、餌を与えます。
それでも成功しなければ、片手を顎の下に入れて上に持ち上げるか、尻を下に押してもいいでしょう。
犬が声による命令に従うようになったら、身振りを用います。手を伸ばして上にあげると、徐々に条件反射が生まれ、遠方に犬がいる場合、声より効果があります。
座ったら褒美を与えますが、少しずつ長い時間座ったままでいるようにしつけます。あなたの近くでよく座るようになったら、1回に半メートルほど離れて、段々と遠方での命令に従うように訓練していくのです。しばらく訓練を続けていけば、20メートルも離れても命令に従うでしょう。
こうなれば、犬がより長時間そのままの姿勢でいるよう、高度のしつけに移ります。
手を頭上に掲げて犬を座らせたら、肘を曲げ掌を前方に突き出しながら、「待て」と命令し、必要な時間座った状態におきます。
ついで、同じ姿勢で「待て」と命じながら、自分は後退します。そして、必ず飼い主のほうが犬のところに戻って褒めてやるのです。次の段階では、あなたが近づくのではなく、掌で腿を叩いて、前の命令を解除する「来い」を命じ、褒美を与えます。
(この訓練に於いては、最初のうちは必ず、飼い主が犬のところに戻る必要がある。これによって犬は
必ず飼い主が戻ってくる、という信念を持つようになる。最初から犬を呼ぶ癖をつけると、犬は飼い主のところに戻りたがり、動くようになってしまう)
もし犬があなたのところに来たがって動いた場合は、最初の姿勢をとらせ、初めから繰り返すのです。うまくいかなくても、がっかりしたり忍耐を失ってはいけません。遅かれ早かれ、数分間同じ姿勢で留まれるようになるでしょう。この訓練を異なった場所、いろいろな状況で行います。
●犬に「座れ」のしつける要点
①犬の名に続いて「座れ」と命じる。
②手を犬の上にあげる(餌を持ってもよい)。
③もし座れば、褒美を与える。
④数日にわたり、①〜③を繰り返す。
⑤もしこれで不十分な場合、顎の下に手を差し入れ、上に持ち上げる。犬が座れば褒美を与える。
⑥この方式によってもよい結果が得られない場合、もう一方の手を犬の腰にあて、顎を上に持ち上げると同時に腰を下に静かに押し下げる。
⑦あなたの傍らで犬が命令に従うようになったら、褒美をやる前に手を肘で曲げ、犬を制止する動作をして「待て」と命令し、実行したら褒美を与える。
⑧「座れ」の時は犬の頭上に手をあげ、「待て」は肘を曲げる恰好をし、声と動作を組み合わせる。
⑨1回に約50センチずつ距離を延ばして、犬が離れたところでも従うようにする。
⑩もし犬が動いたら、元の位置に戻し、必要なだけ最初から繰り返す。
⑪落胆せずに辛抱強く、段階を追ってしつける。
⑫当初は静かな場所で始め、最後は、いろいろ気の散る状況で行う。
⑥の方法は犬に接触することになりますが、このやり方を使用すると効果が表れにくく、た完成が遅れます。というのは、犬にとっては触感のほうが強く感じられるため、視覚、聴覚が妨げられる結果となるからです。うまくいくこともありますが、最悪の場合、腰を押されないと犬が座らなくなる可能性もあります。通常の場合、④から⑦へ進みます。